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Thursday, September 23, 2004

ヴィラ=ロボス、ヴィーヴァ!(その1)

"like"と"love"との境界線はどこにあるのでしょう?

…と、切り出しましたが、この上に粘っこい持論を重ねる意図は全くありません。今回の記事では久しぶりにクラシック音楽を扱います。

エイトル・ヴィラ=ロボス(Heitor Villa-Lobos/1887-1959)という、ブラジルの作曲家について、皆様はどのくらいご存知でしょうか。ほぼ独学で作曲家を志し、やがて「ラテン・アメリカ最大の作曲家」とまで称揚されるようになった彼は、稀に見る多作家でもありました。作品数は1000曲以上、オーケストラの楽器は殆ど弾きこなせたということもあって、そのジャンルも実に多岐にわたるものです。映画音楽も手掛けているのですが、それについては、次回記事にて…。
代表的な作品群としては、9曲のバキァーナス・ブラジレイラス(通称『ブラジル風バッハ』)、そして15曲のショーロスを挙げることが出来るでしょう。参考までに、各々の内訳を詳述致します。

<バキァーナス・ブラジレイラス>

第1番 :チェロ八重奏(1930/1938)
第2番 :管弦楽(1930)
第3番 :ピアノと管弦楽(1938)
第4番 :ピアノ独奏版/管弦楽編曲版(1930/1941)
第5番 :ソプラノ独唱とチェロ八重奏(1938/1945)
第6番 :フルートとファゴットによる二重奏(1945)
第7番 :管弦楽(1942)
第8番 :管弦楽(1944)
第9番 :弦楽合奏、またはハミングによる合唱(1945)

<ショーロス>

第1番 :ギター独奏(1920)
第2番 :フルートとクラリネットによる二重奏(1924)
第3番 :管楽五重奏と男声合唱(1925)
第4番 :3本のホルンとトロンボーン(1926)
第5番 :ピアノ独奏曲「ブラジルの魂」(1926)
第6番 :管弦楽(1926)
第7番 :管楽五重奏とヴァイオリン、チェロ、タムタム(1924)
第8番 :2台のピアノと管弦楽(1925)
第9番 :管弦楽(1929)
第10番:管弦楽と混声合唱(1925)
第11番:2台のピアノと管弦楽(1928)
第12番:管弦楽(1929)
第13番:二組の管弦楽とバンダ(1929)─消失作品
第14番:管弦楽、バンダ、合唱(1928)─消失作品
(補遺) :ヴァイオリンとチェロ(1928)

実に多様な編成が試みられているところに、ヴィラ=ロボスの個性が見られます。それにしても、消失した作品…惜しまれて余りあるものです。

さて、こうした作品群を通覧する…と言うよりも、ヴィラ=ロボスという作曲家の世界にどっぷりと浸かり込む為に打って付けのセットがあります。
ヴィラ=ロボス自作自演集(EMI FRANCE/CDZF 67229/6CD-SET)

今回はAmazon.comではなくてHMVへのリンクにしたのは、在庫状態で最も安価だったからです。勿論Amazon.comにもあります。
Villa-Lobos par lui-meme


これは、ヴィラ=ロボスが1954年から1958年にかけて録音した自作自演のセットです。管弦楽は、フランス国立放送交響楽団(ONRF)。ボーナス・トラックとして、「ショーロとは何か」と題された、ヴィラ=ロボス自身による10分程度の講演(フランス語)が収録されています。
参加しているソリストの顔ぶれも錚々たるもの、マグダ・タリアフェロ、フェリシア・ブルメンタール、アリーヌ・ヴァン=バレンツェン(以上、ピアノ)、フェルナンド・デュフレーヌ(フルート)、ヴィクトリア・デ=ロス=アンヘレス(ソプラノ)といった名が見受けられます。うち、アリーヌ・ヴァン=バレンツェン(Aline van Barentzen/1897-1981)は、知る人ぞ知る名手、ここでは「ブラジルの魂」や、ショーロス第11番のソロを弾いています。シプリアン・カツァリスの先生だそうです。

実のところこのセットに聴かれる自作自演については、評価の分かれるところです。第一に推す人もあれば、今ひとつ受け容れ難いという人も。モノラル録音であることを考慮する必要があるのかも知れませんが、何よりもヴィラ=ロボス自身の演奏スタイルに因るところが大きいと思います。良く言えば情熱的で情感に満ちた演奏なのですが、悪く言ってしまえば、雑然としていて大味なところがあるのです。
それらを踏まえた上で、わたくしはと申しますと、絶対的に前者に与しています。
上述のセットにせよ、その他の音源にせよ、いつもいつでも聴いている音楽というわけではありません。むしろ、突発的に恋しくなる音楽、とでも言いましょうか。これはラテン系の音楽全般に対して持っている傾向でもあるのですが。そして、一旦聴き始めたが最後、暫くの間はそればかり…という状態に。

ヴィラ=ロボスの音楽には、何処か混沌としたところがあります。時に映画音楽を思わせる大仕掛け、民俗的・大衆的な歌謡性、印象主義からの影響。自作自演によって音化されるその奔流は、常に何らかの「匂い」を感じさせるものです。土の匂い、水の匂い、森の匂い、人いきれ…そして、高揚する音楽の傍らで、どこか切ないような心持ちになっている自分に気付きます。これがブラジル固有の「サウダージ」─哀愁とノスタルジアが微妙に混在した情緒─なのでしょうか? 人気の高い、バキァーナス・ブラジレイラス第5番の「アリア」は言うまでもなく、同第3番、第4番に聴かれる、旋律美の極致とも言える美しさ、第2番の生彩溢れる描写音楽「カイピラの小さな汽車」や、ショーロス第10番の合唱が誘う、血が沸き立つような興奮。そのいずれに於いても、共通しています。

音楽学上での完成度が如何ほどの域に達しているかを云々する以前に、わたくしはヴィラ=ロボスの音楽に対して抑えがたい愛着を持ってしまったようです。
この記事の冒頭で世迷い言のようなことを書きましたが、ヴィラ=ロボスの音楽がわたくしの裡に喚起する感情は、もはや理性の一線を越えてしまっているとしか思われません。接していると、その存在が対象化出来なくなるくらいに、自分の中を満たしてしまうのですから。
こういう音楽は、わたくしにとって決して多くはありません。

何かクラシックのCDを勧めろと言われたなら、どのように言われようとも、わたくしは迷うことなく先述の6枚組を挙げることでしょう。以前に比べると、随分と価格も安くなりました。国内盤のフルプライスCDに、あと少しの金額を加算すればいいのです。

まだ続きます。次回も、ヴィラ=ロボス!
 
 

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Comments

ヴィラ=ロボスはちゃんと聴いていなかったのですが、俄然聴きたくなってきました。
確かに値段も手頃。う、うーむ(笑

Posted by: 2号機 | Friday, September 24, 2004 at 07:51 AM

2号機さま、ご来訪誠にありがとうございます!
ご覧頂いただけでも嬉しいところを、コメントまで頂戴してしまって…(*ノ-;*)

ヴィラ=ロボスはメジャーともマイナーとも言える、微妙なポジションにある作曲家ですね。ギター作品などの演奏頻度は、相当に高いのですが。
当記事に於いてはわたくしが過剰にヒート・アップしている側面もありますので、その点については割り引いて頂いた方がよろしいのかも…(^^;

とはいえ、魅力的な作曲家であるということについては、揺るぎないと思います。
ちなみに、わたくしが本文中のボックスを購入したときには、¥7000くらいしたような気が…。

Posted by: Tando | Friday, September 24, 2004 at 09:32 PM

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