« 上海セピアモダン | Main | ローズマリー酒 »

Friday, September 10, 2004

路上の夜

前々回の記事で述べた張鋭の二胡演奏が、ずっと心を捉えて離しません。
聴けば聴く程に、昨今こわばっていた心が安らぎに満たされます。

それが呼び水となったのでしょう、暫くの間しまい込んでいた音源を、ふと聴きたくなりました。
今日は久々に聴いた音源、トルコのケメンチェの話です。

私が所有しているのは『オスマンの響き~トルコの軍楽』という、キングレコードが1991年に出したCD。
ワールドミュージックの中でも恐らくベストセラーに近いもので、何度も再発売されていますね。
現在は

という仕様で流通しています。
タイトルでも明らかなことですが、このCDのメインは17トラックにわたるオスマン・トルコの軍楽(メフテル)です。
向田邦子原作のドラマ『阿修羅のごとく』で一躍有名になった、アリ・ルザ・ベイ作曲の『ジェッディン・デデン』(祖先も祖父も)も、勿論収録されています。

今回取り上げるのは、その余白に収録されている4トラック。『古典音楽』という別括りの中に、ケメンチェの演奏が聴かれます。
ケメンチェ(写真参照)は3弦の擦弦楽器で、演奏の際には膝の上に立て、弦の横に左手の爪を当てて演奏するそうです。この奏法だと指を弦の上で自在に滑らせることで、微細な音程と自在なポルタメント(音のずり上げ・ずり下げ)を表現することが可能になります。

ここでの奏者はハルドゥン・メネメンジオール(Haldun Menemencioglu)という人。検索してみたところ、1912年生まれで、1972年に亡くなった、とのデータに逢着しましたが、CDには1977年4月の録音と記載されています。
どちらが正確なのか、わたくしには量りかねるところです。

独奏による即興演奏(タクシーム)が2曲続いた後、古典歌曲(シャルク)が2曲、ヴォーカルはハルドゥンの妻、エメル・メネメンジオール(Emel Menemencioglu )によるもの。

この歌曲に、わたくしは長年魅了され続けています。
先述のような微細音程とポルタメントを多用した音楽は、ヴォーカルにも共通したものですが、ケメンチェの演奏と絶妙に呼応しています。そこに紡がれる親密な音の彩画は、たとえ日頃聴き慣れない音楽であっても聴く人を惹きつけることでしょう。
今回の記事のタイトル『路上の夜』は、2曲のうちの後の1曲から採ったもの。奏者ハルドゥン自らが、18世紀の詩人ネディンの詩に作曲したという『バラの園』共々、歌詞が全く記載されていないのは残念なことです。

それにしても、美しい音楽です。
歌のフレーズの一つ一つが静かな余韻を残して消えてゆく有様は、昧爽の光をはらんだ巻雲を思わせます。

『路上の夜』、一体どのようなことを歌っているのでしょう。

旅路の心でしょうか、それとも、凋落の果ての嘆きなのでしょうか?

静かに聴き入りながら、想像は尽きることがありません。
 
 
 
 

|

« 上海セピアモダン | Main | ローズマリー酒 »

Comments

昨日カウンタを設置したのですが、同一ホストからの連続リロードでも計上されてしまう代物だったので、僅か1日で変更です(^^;
今度のはしっかりした造りになっているようで安心。
セルフアクセスばかりでどんどん回られたのでは、何のために設置したカウンタなのかわかりませんから…。

東海・近畿地方、相変わらずの地震続きで非常に不安ですね。
紀伊半島沖のみならず、ここ数日は他の震源からも散発している点が不気味です。

大事に繋がらないことを祈るばかりです。

Posted by: Tando | Friday, September 10, 2004 at 02:18 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 上海セピアモダン | Main | ローズマリー酒 »