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Sunday, October 17, 2004

コルト マルテーズ(Corto Maltese)

先日の記事「隻眼のマッド・バロン」にて触れたフランスのアニメーション映画、「コルト マルテーズ/Corto Maltese」、とうとう購入してしまいました!

maltese.JPG


ろくろく商品説明も得られないまま購入に踏み切ったのですが、ちゃんと日本語吹き替え音声も付属していて、感心することしきり。
でも、どこをどう検索しても、吹き替えキャストの情報には逢着しないので、本体記載のクレジットを抜き出しておきましょう。

コルト・マルテーズ:堀内賢雄
ラスプーチン:菅生隆之
公爵夫人マリーナ・セミノワ:田中敦子
上海リー:山田里奈

どちらかと言うと、洋画吹き替えに近いスタンスでのキャスティングですね。吹き替え版は未だ全編を観ていないのですが、オリジナルに比べると若干印象が異なるようにも感じます。

さて、全体の感想です。

正直なところ、過剰な期待は禁物、という腹づもりで観始めたものの、なかなかの佳作だと思います。始終抽象的なダイアログに振り回される、くらいの覚悟はしていたのですが、しっかりとストーリーに引き込むだけの力は持っている作品です。詰め込みすぎ、という印象もあまりありませんでした。

しかしながら、確かに物足りなさは残ります。
これは、原作コミックの雰囲気に従順な翻案であるが故に生じた問題なのでは無いか、とわたくしは感じました。
最終的に複数のキャラクターの独白を用いて、ストーリーを補足している要素があるのですが、個人的にさほどの不快感は覚えません。
同時に、この場合に於ける、コミックスとアニメーションという二つの形態の齟齬を示している方法だとも言えます。
ラストシーンで語られた物語の結末が、さほど心に残らないのも、恐らくプロットの限界に因るものではありません。登場人物とその命題との結びつきが、切実さを欠いたままに描写されているからです。
コミックスでは可能な補完的受容も、リアルタイム進行のアニメーション作品で成立させることは難しい、ということを痛感した次第です。

でも、わたくしはこの作品に対する好悪を訊かれたならば、迷わず「好きだ」と答えることでしょう。
作品世界を覆う物憂い雰囲気は、決して付け焼き刃では生まれ得ないものです。わたくし個人の嗜好も関係しているとは思いますが、やはり抗い難い魅力を感じてしまいます。
後先が在るともつかない、鉄路の行く末にその身を委ねる公爵夫人、そしてキャラクターデザインを難じたくなるような、上海リーでさえも、作中にあっては美しいのです。

ただ、公爵夫人の退場の仕方、これはわたくしが抱いた最大の不満点と言えます。こんなにも魅力的なキャラクターを、あのように扱ってしまう神経、少なからず疑いたくもなるというものです。
勿体無いこと、この上ないです。わたくし、怒ってます。

…と、ぼやいてしまう程、公爵夫人は印象的かつ魅力的なキャラクターでした。
作中、蓄音機から流れるチャイコフスキーの「花のワルツ」、年代と照合して誰の演奏なのかを妄想するのも、また楽しです。

さて、本件の発端とも言えるウンゲルン男爵、後半にちゃんと登場しました。冷酷さを伺わせる描写はあるものの、その前に登場したセミョーノフがさんざん暴れ回ったこともあり、期待を裏切る(?)まともな描写に止まっています(^^;
それでも、ようやく目の当たりにすることが適ったキャラクタライズは、なかなかに格好良いもので、一応の満足は得ることが出来ました。
それと、僭越ながらも、過日の記事で連ねた男爵の略伝を留め置いて下さると、作品への理解の一助となるかと存じます。そういう描写が、登場するのです。
 
でも、ウンゲルン男爵が伝奇的に描かれる余地は、まだまだ残されていそうですね。 
次なる活躍の舞台(?)を用意するのは、またも欧州圏なのでしょうか、それとも…?
 
 

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Comments

台湾で以前放送されたことがあるので何てミステリアスでアドベンチャー要素満点のアニメだろうと大変驚きました。sun

中国とロシアが関わっているので物語の舞台の独特で広大な世界観に魅了されました。riceball

Posted by: 台湾人 | Tuesday, January 10, 2012 at 11:20 PM

台湾人 様

歓迎光臨、ようこそ!
コメント、ありがとうございます。
私も貴方と同じ理由で、
この「コルト・マルテーズ」を面白いと思いました。

台湾ではテレビで放送されましたか。
日本では、確か「まだ」の筈です。
(私の記憶に『無い』だけかも知れませんが…)

「コルト・マルテーズ」が放送されるということは、
則ち、「台湾の放送文化の質と程度が高い」ということだ、と私は考えます。

それと、実家に住む、私の母は、日本で放送されている台湾のTVドラマをとても楽しんでいますよー^^
また私も台湾に、強い親近感を持っています。

今は「銀璧亭」改装中で、私からのResponse,特にCommentが「低い」状態なので、多く「対不起」有るかもしれませんが、また見てやって下さい。

次回も歓迎光臨ですー(^^)

Posted by: Tando | Sunday, January 22, 2012 at 06:07 PM

実は最初はこれは日本のアニメかな?と思っていたんです。baseball

上海リーというミステリアスなアジア人女性が主人公のコルト・マルテーズと対等にやりとりが出来ているし、私の偏見かもしれませんがフランスのプロダクションなのでフランス人はアジアを物語の舞台そして素材として見据える時は英米のアングロサクソン集団みたいに先入観と自分勝手に満ちた実態とかけ離れたアジア像とは違うので、すごい秀作だと思います。pouch

英仏が北米を争っていたフレンチインディアン戦争もフランスの方がアメリカンインディアンの文化と伝統を尊重していたように思えます。id

Posted by: 台湾人 | Monday, January 23, 2012 at 05:57 PM

>台湾人 様

余りにも遅いお返事となりました事をお詫び申し上げます。
貴方の御明察に対して、私も大いに共感致します。

この日記を書いた当時、Wikipediaも現在ほど多くの情報を網羅していなくて、ウンゲルンの情報を探すのも一苦労でした。英文サイトですら、寡少な状態でした。今でこそウンゲルンやセミョーノフの情報をかなり詳細かつ容易に知ることが出来ますが…。

この映像作品には、個人的にいい時期に出会えたと思っています。アニメーションとしてのクオリティも高い作品でしたね。
さすが、アニメの父、Emile Cohlを輩出した国です。

Posted by: tando | Friday, June 08, 2012 at 01:50 AM

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