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Wednesday, October 06, 2004

ジャン・ヴィエネ(ヴィーネ)の即興演奏

一年越しで探し続けていたCDが、とうとう手に入りました。Amazon.comで3回発注をかけた挙げ句、入荷しないまま「在庫切れ」扱いになってしまった因縁の一枚なのです。

事の発端は、サティでした。
チッコリーニによる旧全集と並んで、最も早い時期にサティのピアノ作品全集を完成させたピアニストが、ジャン=ジョエル・バルビエ(Jean-Joël Barbier/1920-1994)です。
今以て名盤として高く評価されている同全集ですが、4手作品のセカンド・パートを受け持っている人、これが実は見落とせません。
その人の名はジャン・ヴィエネ(Jean Wiener/1896-1982/『ヴィーネ』『ウィエネ』『ヴィエネル』とも)。画家のブランクーシ、指揮者のロジェ・デゾミエール、作曲家のロベール・カビーらと共に、サティの臨終に侍した一人なのです。
そのような由緒を知ってからというもの、ヴィエネに対する関心は俄然高まりました。他に録音は存在しないのか、また作曲家でもあったということで、どのような作品を書いているのか、などなど。
調べているうちに、更に驚くべき(あくまでわたくし個人にとって、ですが)事実を知ることとなりました。
ヴィエネは1930年代から数々の映画音楽を手掛けたということなのですが、その名は知らずとも、一度ならず目にした作品が多数含まれているのです。

goo 映画─Jean Wiener(ジャン・ヴィーネ)


とりわけジュリアン・デュヴィヴィエとの共同作業が多く、古くは「白き処女地」「商船テナシチー」、戦後の「巴里の空の下セーヌは流れる」「殺意の瞬間」、その他にはジャック・ベッケルの「現金に手を出すな」など、枚挙に暇がありません。
驚きました。全然意識せずに観てました…うーむ…。

さて、そのような発見を伴いつつ逢着した音源が、本日届いた一枚のCDなのです。

Jean Wiener/Piano Improvisation


Amazonで在庫切れになってしまったため、その後長らく入手の方法が閉ざされていたのですが、先日HMVでアーティスト名ではなくレーベル名から検索したところ、商品リストに掲載されているではありませんか。
慌てて発注してみれば、ものの一週間も経たないうちに入荷。折良く在庫が有ったのでしょうか、嬉しいことです。

待望久しかっただけに、寄せる期待も相当に膨らんでいました。そして実際の音楽は、予想を遙かに上回る素晴らしさです!
音質こそまちまち(年代の古い音源は些か聴き辛いかもしれません)ではあるものの、早くもマイ・フェイヴァリットです。エヴァー・グリーンです。

タイトルにもあるように、このアルバムに収録されているのは全て、ヴィエネによるピアノの即興演奏です。ラジオ・フランスの番組、"Et bonjour chez vous"(こんにちは、みなさん)中で披露された、1950年から1964年までの放送録音が集められています。
大半が"Et bonjour tout le monde"(こんにちは、世界のみなさん)という同一タイトルのものですが、そのスタイルは実に多様です。

リュリやクープランを思わせる演奏がある一方で、1920年代のチャールストンやフォックス・トロット風のもの、更に下って、よりモダンなスウィングを踏襲した演奏に至るまで、聴く者を厭かせることがありません。
とにかく、ヴィエネの音楽はセンスが良い!
クラヴサンをフィーチャーした「J.S.バッハの様式による即興演奏」の擬古的かつ新鮮な美しさは、自由な創意あって初めて生まれたものでしょう。更には「ジェルメーヌ・タイユフュールのスロー・ダンスによる即興演奏」に聴かれるエスプリ、11分にも及ぶ「アメリカの歌による即興演奏」の、洗練されていながらも訴求力に溢れる音楽、その音楽的土壌は、驚くべき拡がりを見せます。

才覚ある音楽家から如何にして作品が生まれるのか、その瞬間を捉えたこれらの記録は、まるで錬金術の秘法を目の当たりにするようです。ラジオ・フランスには一体どの程度録音が保存されているのかわかりませんが、残っているものは片っ端から復刻して欲しいと願ってやみません。

関心をお持ちになられた方には、是非ともお聴き頂きたい一枚です。
 
続編記事>>ジャン・ヴィエネふたたび
 
 

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