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Sunday, May 15, 2005

ギンズブルグのライヴ音源(2)

ギンズブルグの音源は、これまでにも様々なレーベルからCD化されてきました。
代表的なものとしては、PHILIPSの「20世紀の偉大なるピアニストたち/vol.37」(PHCP-20677/8)が挙げられるでしょうか。メジャー・レーベルのこうした企画に、いきなりギンズブルグの音源が載せられたことには、正直言って驚きました。例えば、同じソヴィエトのピアニストでも、ショパン・コンクール第1回の優勝者オボーリンは取り上げられていないのですから…。欧米では、ギンズブルグの認知度は高いのでしょうか?
このセットに選ばれた音源は、録音状態の比較的良好なものが多く、ギンズブルグの芸境に触れるためには必携と言えそうです。

その他に国内では、meldac-TRITONから「ロシアピアノの巨匠たち/グリゴーリィ・ギンズブルグ」と題された3枚のシリーズが発売されていました。殊にショパンのop.25の練習曲集と即興曲全4曲を集めたアルバム(DMCC-24034)は、技巧的な側面とはまた異なったギンズブルグの魅力を示す、貴重な1枚です。
その他海外ではBMG-MELODIYA、DANTE- Arlecchino、Multisonic、mobile fidelityなどからもCD化されていましたが、大半が現在では入手困難な状態となっています。


これはCD復刻に限られたことなのかも知れませんが、ギンズブルグの音源は、その大半がかなり貧しいクオリティで捉えられています。それ故に本来の魅力が大きく損なわれているであろうことが、残念でなりません。多くの録音では、強靱な技巧に伴う迫力ばかりが強調されて、その何倍もの神経を注がれた繊細な情緒が殺がれてしまっているのです。また、使用しているピアノも調律が万全で無いのでしょうか。通りの悪い、濁った響きがしばしば聴かれます。

話を前回記事のライヴ音源に戻します。
これらの音源については、概ね期待を上回る録音状態でした。その点だけで、もう感慨無量と言った心持ちです。特に1949年のライヴ(VACD 00101)は素晴らしい! 極上とは言えないまでも、斯くも偏りの無いコンディションは、従来殆ど期待出来ませんでした。それに比べると1957年録音の2点は些か落ちますが、それでも演奏の輪郭が損なわれずに済んでいるので、及第点以上だと思います。

それにしても、実に内容の濃いプログラムです。たまりません。

リストの作品が中心のVol.1は、稀代の技巧派たるギンズブルグの本領を伝える1枚です。わたくしの場合、リストのコンチェルトを「美しい」と感じることなんて、ギンズブルグ以前には皆無に等しかった。これは、その他の超絶技巧曲においても同様のことが言えます。
このピアニストは練成された技巧を持ちながら、如何にそれを乗り越えるかに心血を注いだ人です。往々にしてけばけばしく響く作品の、滅多に聴かれることの無い「内なる声」が、ギンズブルグの演奏を通じて静かに語りかけてきます。

続くは「スペイン狂詩曲」。アーロン・シェレシェフスキー(Aron Shereshevsky)と共演したスタジオ録音(1951年/スタジオ)よりも、遙かに良好なコンディションです。ギンズブルグの音色は、斯くも輝かしかったのか!
剛毅だが大味なアノーソフも、ここでは熱いサポートを繰り広げています。

そしてギンズブルグの「落款」とも言える作品「セレナード」。更に「ラ・カンパネッラ」…。meldac-TRITON盤の痩せた音質で聴いていたものは何だったのでしょうか。ライヴ故の若干の綻びが見受けられますが、それにも増して良好な条件で鑑賞する必要性を痛感させられます。こうして聴いていると、両作品共にギンズブルグの為に用意されたかのよう、息を呑む程美しい音楽です。

さて、本来は前後編2回で完結する予定だったのですが、ひとまずVol.1への言及が終わったところで区切りたいと思います。Vol.3は2枚セットなので、分量的にも丁度良いでしょう。
 
 

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