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Saturday, May 07, 2005

ニーニョ・デ・カブラ

だいぶ更新の間が空いてしまいましたが、今後数回「フラメンコ」のカテゴリ拡充に向けて頑張ってみようと思います。年初以来実に5ヶ月ぶりの記事追加です。
本件に際してはとりわけ、nino様のblog"Pena El Gallo"から度重なるご厚誼に与った事に触発されております(^-^)

とは申せ、従来のようにアルティスタの列伝詳述から切り出すのは差し控えようと思うのです。こちらにウェイトを割いてばかりいると、肝心の本旨が思い通りに書けなくなってしまいますから…。

今回はコルドバのカブラ出身のカンタオール、ニーニョ・デ・カブラ(Nino de Cabra,1870-1947)について。
アントニオ・チャコンより1歳若いこのカンタオールは、録音史から見ると最年長の世代に属しています。遺された音源の分量も多く、19世紀末の蝋管に始まって、アクースティック期の平円盤レコード、そして電気吹き込み以後少なくとも1930年頃までは録音を行って、第2次大戦後まで及ぶ長命を保ちました。

CDへの復刻は、複数のレーベルから様々な年代のものが取り上げられていますが、まずお勧めしたいのは国内盤で発売されているグラン・クロニカ・デル・カンテ(GRAN CRONICA DEL CANTE)のVol.3Vol.5です。
どちらも1929年の吹き込みで、ラモン・モントージャが伴奏を受け持っています。

殊に素晴らしいのは、Vol.3収録のシギリージャとファンダンゴです。カンテ・アンダルースの達人としてチャコンの衣鉢を継ぎながらも、独自の境地を切り拓いたカブラの真骨頂が聴かれます。
カブラはチャコンとよく似たハイ・トーンの声質の持ち主ですが、幾分鼻に掛かったような癖があります。「んあ~」と聞こえる独特のサリーダは、一聴して彼と判断出来る程。もっとも、却ってそこから「いかにも大家」と言うべき風格が醸し出されているように感じられるのですが。
「グラン・クロニカ」Vol.3に収録されたシギリージャは、底暗い慟哭を湛えたヒターノ流儀とは異質ながらも、非常に感動的な聴き物と言えるでしょう。荘重で叙情味を帯びた歌い回しからは、是も非もなくトラジックな香気が立ち上ります。
これぞ、今日殆ど聴かれなくなったスタイルでは無いでしょうか?
伝統的なカンテ・ヒターノとも、また広義におけるモデルノとも異なる、しかし、カンテ・ホンドの本流から道を違えることもない…。
こうした音源こそが、カフェ・カンタンテの時代、セニョール・シルベリオの時代に対する恰好の偲び草なのだと思われてならないのです。

そして、ラモン・モントージャの伴奏も、彼の芸境の真骨頂が聴かれます。
モントージャは確かヒターノの出自であったと記憶しますが、不思議とチャコンやカブラと言った非ヒターノの歌い手と組んだカンテ・アンダルースや、或いはファンダンゴに対して、抜群の相性を示しているように感じられるのです。
この点については後日折を改めて言及する事として、まずはその素晴らしいファルセータの魔力に酔いしれようではありませんか。
神話世界の竪琴を思わせる深甚な音色は、何処を見渡してもモントージャだけの音楽です。

そして、可能であれば仏MANDARAレーベルの"ARTE FLAMENCO Vol.12-EL CANTE EN CORDOBA"(MAN 4885)もお聴き願いたい所です。
12曲収録されたニーニョ・デ・カブラのトラックは、アクースティック録音と電気録音が混在していますが、すべてラモン・モントージャと組んだ吹き込みです。
サーフェス・ノイズの多い復刻ながら、音質は比較的明瞭なので両者の芸境を堪能するには充分でしょう。電気吹き込みのメディア・グラナイーナやカルタヘネーラ、ベルディアーレスなどはカブラのカンテ、モントージャの伴奏共々、まさしく絶品と言う他ありません。
 
ニーニョ・デ・カブラの復刻CDはPRODUCCIONES ARの"CATEDRA DEL CANTE"シリーズのVOL.24に1枚が割かれていますが、残念ながらこちらは復刻状態に甚だしい遜色があります。勿論、聴いておいて絶対に損は無いのですけれども…。

スペインの総合音楽レーベル、Sonifolkは、この分野の復刻において非常に素晴らしい業績を成しています。
ニーニョ・デ・カブラは、モントージャ以外にもマノロ・デ・バダホスとも10数面の吹き込み(恐らく電気録音)を行っているようなので、是非とも集成を願いたい所です。
ただ、ここ2年来、同レーベルからのフラメンコ旧音源の復刻が滞っている点、非常に気掛かりなのですが…。
奮起を求めます!
 

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