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Monday, May 23, 2005

ドブロウェンのシェエラザード

久し振りにCD店へと足を運びました。その折に、ずっと気に掛けていた新譜を購入した次第です。

イザイ・ドブロウェン指揮の、シェエラザード。
Scherazade: Dobrowen / Po +Mussorgsky: From Boris Godunov/ B.Christoff(Archipel/ ARPCD0308)


ArchipelのCDは1点当たりの単価が1000円前後なので、通販だと送料との兼ね合いを考えて、つい発注しあぐんでしまいます。
結局このタイトルも店頭で直接買った方が早い、と決め込んで、漸くこの度聴き得た次第です。

イサイ・ドブロウェン(Issay Dobrowen,1891-1953)については、以前フェインベルグの紹介記事中にて少々言及しました。ニジニ・ノヴゴロドに生まれたドブロウェンは、モスクワ音楽院でタネイエフとイグムノフに学び、後にはゴドフスキの薫陶も受けました。その後、指揮者・ピアニストとして活動する一方、作曲家としても少なからぬ作品をものしています。
わたくしが知るのはただ一曲、SP期にカール・フレッシュが録音したヴァイオリン小品「ヘブライの旋律」だけですが、哀調に満ちた佳曲で、長く印象に残っています。

詳伝は判然としませんが、ドブロウェンはロシア革命後のある時期から活動の場を西欧に移したようです。それ以後の指揮者としての活動は、数々の名ソリストと組んだ伴奏録音に残されています。
しかし、単体の指揮者としての彼を窺い知る資料は乏しく、せいぜいボリス・クリストフをタイトル・ロールに迎えた「ボリス・ゴドゥノフ」が出回っている程度だったのではないでしょうか?
この度Archipelから発売の「シェエラザード」は、個人的に久しく待望したドブロウェン単独の音源です。1891年生まれの彼は、プロコフィエフやゴロワノフと同年輩(ついでに言うと、奇しくも没年まで同じです)。ロシア=ソヴィエト圏の指揮芸術を遡上する上での、貴重な参考音源の登場です。


結論から先に言ってしまうと、これは久しく耳にしたことの無かった物凄い演奏です。

まず、フィルハーモニア管弦楽団の音色が尋常ではありません。目隠しで聴かされたら、モスクワのオケと間違えてしまいそうです。痩せた刺々しい音質にも起因するにせよ、例えば同時期にニコライ・マルコが同楽団を振った音源では、こんな音造りは聴かれません。重厚で切れ味の鋭いアンサンブルは、ドブロウェン自身の個性と断定して良いでしょう。

そう言えば、ジャケットに用いられているドブロウェンの指揮姿も大迫力です。この人はなかなか端正な面差し(ご関心の向きは、Googleのイメージ検索で"Dobrowen"を叩いてみて下さい)だった筈ですが、当盤のジャケット写真では三白眼を剥き出しにしたアオリ構図の恐ろしい形相です。実際、演奏もそうした気迫が乗り移ったかのような趣があります。

濃厚な表情付けを施しつつも、決してベタベタの大甘にはなりません。その点では同時期のロシア指揮者と共通する傾向を示しています。
また、随所で聴かれる怒濤の如き重低音は、同輩のゴロワノフが録音した同曲と似ていないでもありません。しかし、ドブロウェンの方が一層縦の線を揃えた、メリハリのある演奏になっていると思います。殊に「バグダッドの祭─難破」の畳みかけるような迫力は比類がありません。
それでいて、ミニアチュール的な造り込みも怠ってはいないので、交響組曲としての全体像も充分な訴求力を持っています。決して単なる珍演・奇演の類ではありません。
いや、むしろわたくしは、斯様な「シェエラザード」を求め続けておりました。たとえクーセヴィツキーが同曲を録音していても、こうはいかなかったのでは…?

とにかく一聴しただけで強烈なインパクトを受けた演奏です。難を挙げれば、少々ピッチが高く聞こえる点でしょうか?

録音年は1953年。ドブロウェン没年の大熱演でした。


そうそう、当記事をもちまして、開設以来150本目のエントリーと相成ります。
多くの皆様のご厚誼に支えられ、ここに到ることが出来ました。謹んで御礼申し上げる次第です。
ありがとうございました。

最近は記事追加も思うに任せませんが、今後とも宜しくご笑覧を賜りましたら幸甚です。
 
 

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Comments

『シェエラザード』大好き人間にとっては非常に刺激的な記事ですね。きっと買うでしょう。教えていただいて、どうもありがとうございます。
また、150本目のエントリーもおめでとうございます。

ところで、最近の流行なのか、海外の音楽好きブロガーからはじまった「Musical Baton」とかいうものが回ってきたのでバトンをお渡しします。音楽に関する4つの質問に答えて5人に回すという、チェーンメールというかチェーンブログみたいなものですな。興味がありましたらお暇な時にでも書いてみてくださいまし。私は猫パンチさんから回ってきて、今日エントリーしました。

Posted by: サンタパパ | Friday, June 17, 2005 at 01:58 AM

>サンタパパ様

ご無沙汰致しております。
ドブロウェンの録音は、作曲家と同時代のロシアにおける演奏様式を伝えているのではないかと思います。
録音が些か古いのが難点ですが、得難いものを感じつつ、昨今はこの演奏ばかり聴いている次第です。個人的には、思いがけない拾いものでした。

>150本目のエントリー

ありがとうございます!
次の壁は200本と言うことになりますが、このぺースだと年末になってしまうかも知れません(^^;

>バトン

このような光栄に浴するとは…と恐縮しつつ、大変なものを受け取ってしまいました(^^;
宵の口甘口で書きたい放題書き連ねております。
質問事項を変えて、今後もまた回ってくるかもしれませんね(笑)
色々な方がお選びになる「5曲」、是非参考にさせて頂きたいと思っています。

Posted by: Tando | Friday, June 17, 2005 at 05:55 AM

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