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Wednesday, August 03, 2005

至高のベートーヴェン交響曲全集~J.クリップス

ベートーヴェン:交響曲全集
  (5-CD SET/EVEREST EVC 9010/14)
ヨーゼフ・クリップス指揮/ロンドン交響楽団ほか

録音:1960年頃/全曲ステレオ

亡父の遺品、30枚ほどのLPレコードの中に、ベートーヴェンの「第九」はただ一種、クリップスの演奏が含まれていました。しかしながら我が家のLP再生環境は壊れて久しく、ついぞ聴く便宜を得ないまま今日に至ります。
1994年に版元の米EVERESTが手ずからCD化しましたが、レーベル解散に伴って廃盤に…。これは存在すら知らずに看過しておりました。
昨年になって、全集BOXの体裁で廉価再発されたものの、音質面では惨憺たる劣化コピーとの由。それを聞き及び、買い控えていたのです。

そして先日、神戸の中古CD店にてEVEREST盤を見出した次第。全集5枚組、外箱付きで、5000円強。何を迷いましょうか、即時購入です。
わたくしが神戸に行くと、何故かしら必ず、尊い邂逅があります。
神戸万歳。

念願叶って漸く聴き得たクリップスのベートーヴェン。
蓋し、至高の名盤です。
もう、今は他に何も要らない…と思い詰めてしまう程の名演揃い。録音も申し分ありません。

クリップスの解釈は、作品自らが語るに任せているかのようです。彼自身の恣意や衒いは感じられません。
しかし、その「語り口」とて、いかに含蓄を引き出すか、受け手の按配一つで格段に奥行きが増すのではないかと思います。その意味でクリップスは、まさしく絶妙な聞き上手、語らせ上手です。
ここに聴かれるベートーヴェンは雄渾にして高貴、そして無尽の優しさをも湛えています。
特別なことは何もしていない筈なのに、そこに作品の全てがあるのです。
ロンドンのオーケストラを振っているけれど、何となくウィーンの情緒が現れているのかもしれませんね。

ベートーヴェンの交響曲における、奇数番、偶数番、という区分を意識せずにいられたのも、このクリップス盤が初めてです。 ともすれば、一人の指揮者による全集としては最高位に属するのではないでしょうか。
強いて指摘するならば、「第九」だけは声楽陣にやや難ありと言えるでしょう。特に独唱者は、皮相的な表現に陥る感がなきにしもあらず。しかし、音楽全体の完成度を思えば、それすらも些末なことと思われます。

先述の如く、奇しき由縁あってこそ、殊更にクリップス盤との出会いがありました。
亡父は生前、「手元にあるのは、その時安く買えたレコードばかりだよ」と申しておりました。恐らく音楽仲間同士での融通も含めた言なのでしょうが、斯様な名演と出会えるのならば、あながち悪くない買い方だったのかもしれません。

なお、EVEREST盤のCDはAmazon(USA)のマーケットプレイスに、ばら売りで複数出ているようです。ご参考までに。
本当は、確かな状態で復刻されるのが最良の途なのですが…。
 
 

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Comments

おはようございます。
クリップスについてあまり集中的に聴いたことはないのですが、LP時代にモーツァルトのシンフォニーを聴いて、見かけはごくふつうの演奏だけどとても暖かい雰囲気が感じられて、何かほっとした記憶があります。やはり彼の人柄なんでしょうか・・・。
ご紹介されているベートーベンは未聴ですが、機会があれば是非聴いてみたいと思います。

Posted by: romani | Saturday, August 06, 2005 at 07:16 AM

>romaniさま

ご無沙汰致しております。

私自身、クリップスはあまり聴いたことがない指揮者なんです。今回のベートーヴェンで一気に開眼しました。
強烈な個性こそありませんが、何種類か同曲異演を聴いてゆくうち、相対的に価値が上がってくるタイプの人だと思います。
EVERESTの音源もお蔵入りのままでは非常に勿体ないですね。昨今のヴァンガードのように、正規で再発売して欲しいです。

Posted by: Tando | Saturday, August 06, 2005 at 08:39 AM

はじめまして。
クリップスのベートーベン全集EVEREST盤、
私も買いましたよ、しかも中国北京にて。
北京の銀座といわれる王府井に、外文書店という本屋があって、
そこのCD売り場に、山積みになって売っていました。
価格は当時日本円で1,500円でした。
小学校時代、初めて聴いたベートーヴェンが、
クリップス指揮、ロンドン響による田園と第九でした。
懐かしくなり、値段も格安だったので、
迷わず購入しました。

Posted by: ポーサ | Saturday, September 10, 2005 at 11:58 PM

>ポーサさま

はじめまして!

北京でお買い求めになったとの仰せ、音盤との巡り合わせは実に様々だなとの感慨を抱きます。

購入から実に一ヶ月以上が経過しましたが、未だに飽きの来ない演奏ばかりです。
私は中古で、加えて5000円でしたが(笑)、損のない買い物だったと満足しております。

Posted by: Tando | Tuesday, September 13, 2005 at 09:28 AM

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