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Thursday, September 22, 2005

V.スミルノフ指揮/アレンスキー/ショスタコーヴィチ

前回エントリーの如き顛末を経て、私は未だ疑心暗鬼に陥ったままだ。それにも拘わらず、またもやソヴィエトの音源を取り上げようとしている。
しかしながら冷や水を浴びたような心地が続いているのも、また事実だ。とりわけ感銘を受けた音源があるにせよ、今後は自戒の意味も込めて、一定の突き放したスタンスを維持したいと思う。
受けた傷は深く、未だ癒えてはいない。

さて、今回取り上げるのは、下記のCDだ。
Arensky - Opera "Rafael"
Shostakovich - Suite "Gadfly"
Victor Smirnov(露MARANS/品番記載なし)

Amazon-USAでショスタコーヴィチの「馬あぶ」(英題:Gadfly)を漫然と探していて、突如発見した。
ヴィクトル・スミルノフ、一切予備知識の無い指揮者である。
キーワード検索を試みてみたのだが、さしたる情報とて得られなかった。しかし、収録曲目、録音年代、そしてジャケットの雰囲気と、総てにおいて稀少音源としての気配を宿しているではないか。
此処で何をか迷わん。

そして先日、現物が手元に届いた。

先に当たり外れを言うならば、これは大当たりだ。
だが、従来の軽率を省みて、極力冷静なご紹介を心掛けたい。

収録曲目と演奏者は、以下の通り。

◆アレンスキー:歌劇「ラファエロ」(ロシア語版/全曲)
1)導入部
2)徒弟の場面とラファエロのアリオーソ
3)ラファエロとフォルナリーナの二重唱
4)ビビエーナ枢機卿のアリア~三重唱~フィナーレ

ラファエロ - Victor Kalujsky(ten)
フォルナリーナ - Zara Dolukhanova(sop)
ビビエーナ枢機卿 - Alexey Korolev(bass)
舞台裏の歌手 - Vladimir Kravzov(ten)
ソヴィエト国立放送交響楽団・合唱団
1957年録音

◆ショスタコーヴィチ:組曲「馬あぶ」(抜粋)
1)序曲
2)導入
3)コントルダンス
4)ギャロップ
5)間奏曲
6)ロマンス
7)手回しオルガンのワルツ
8)夜想曲
9)祭日
ソヴィエト国立キネマトグラフィ管弦楽団
1957-58年録音

まず、アレンスキーの小歌劇「ラファエロ」の全曲録音は極めて稀少であり、それだけでもこのCDの価値は大きい。
同作品のイタリア語版についてはオルベリアン指揮の全曲盤がDELOSから発売されている。しかし、ロシア語版による全曲録音は、現在のところ他に見当たらないのではないか。
全く初めて聴き知った作品だが、この作曲家らしく、沫雪のような美しさを湛える佳作であると思う。ドルハーノヴァをはじめ、声楽陣の完成度も傑出している。

そして、ショスタコーヴィチの「馬あぶ」。
冷静に、冷静に、と心掛けても、言葉に熱が入ってしまいそうで困る。そうだ、この曲はこういう演奏で聴きたかったのだ─と、湧き起こる歓喜は、どうにも抑えようがない。

「序曲」からして、ロシアならではの力強いブラスの響きが、哮る。まるでグラズノフの交響曲を聴いているような気分である。これは、たまらない。
「馬あぶ」は、「序奏」(ピアノ・ソロによる自作自演が遺されている)をはじめ、ショスタコーヴィチの作品の中でも叙情的な旋律美が際立つ。対するスミルノフの手際は、しんしんとした叙情味と、底暗い重厚な響きとを見事に調和させており、素晴らしい。ロシア・オケのお家芸とも言える、開放弁を全開にしたように豪放な音造りは、正しく期待に違わないものである。

アトヴミャーン編曲による組曲版は全12曲なので、僅かながらも取りこぼしがある点が惜しまれてならない。とは言え、作品の発表から近い時期に録音された、これらの名演を逸する手は無いだろう。

1957-58年の録音ということで気を揉んでいた音質も、テープが若干くたびれた箇所はあるが、同時代の水準からすれば許容範囲と言えるだろう。
勿論、あくまで旧ソ連規格、としての話だけれども。

最後にヴィクトル・スミルノフ(Victor Smirnov)について。
ライナーノーツには詳細な記述があるのだが、残念なことに全文がロシア語なので、不勉強な私は解読の手だてを持たない。
ただ、1904年生まれということのみ知り得た旨を記しておく。没年と思しき記述は見当たらなかった。
 
 

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