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Monday, June 12, 2006

バーバー:弦楽のためのアダージョ/ミュンシュ指揮/BSO

RCA 09026-61424-2

チャイコフスキー:弦楽セレナード
バーバー:弦楽のためのアダージョ
同   :メデアの瞑想と復讐の踊り
エルガー:序奏とアレグロ

シャルル・ミュンシュ指揮
ボストン交響楽団
1957年録音

ミュンシュの割合に意外なレパートリー(これは私個人の主観かも)を集めた1枚。
中古CDセールのワゴンから、「あれ、こんな録音あったの」といった心持ちで手に取り、そのまま購入した。
特にバーバー、旧来名演との呼び声も高いようで、どうして今の今まで知らなかったんだろう。

非常に高い人気を誇る「弦楽のためのアダージョ」、たぶん手元には6~7種類の演奏(少ない方?)があったと思う。従来愛聴してきたのは、トーマス・シッパース指揮/NYPによるCBS録音だった。
シッパースは演目次第で「あれ?」と感じさせるような、悪く言えば軽薄とも聴かれる演奏をする指揮者だと見なしてきたが、そうした印象はこのアルバムで払拭した。作曲家と指揮者の親交が十全に活きた、適材適所の名盤だと思う。

そうは言いつつ「弦楽のためのアダージョ」で、どうしても忘れられないのが、トスカニーニ指揮/NBC soの名演。
弦楽合奏版の他ならぬ依頼者・初演者であるトスカニーニの解釈を「原点」とするならば、時代が下れば下る程、如何に余計なイメージが付与されていったかを痛感せざるを得ない。ほとんど誰よりも速いテンポ─しかし、他のどの演奏よりも峻烈なのがトスカニーニ盤である。1867年というトスカニーニの生年を見るに付け、演奏史における時系列とのギャップに驚嘆する。

ともあれ、陰々滅々と葬送音楽さながらに演奏される「弦楽のためのアダージョ」には、いい加減食傷していた。
そこにこのミュンシュ盤、私にとっては、まさしく遅れて届いた光明。
演奏時間は7分45秒、速い部類に入ると言って良いだろう。
ミュンシュが採った速いテンポ、そしてボストン響の研ぎ澄まされたアンサンブルとが相乗して、強靱とさえ言える響きが生まれている。
そこに、死、葬送と言った、却って固定化しやすいイメージよりも更に高次の境地があるように感じられるのだ。やたらと蒼白に、また弱々しく奏でられる箇所は皆無、畢竟、これは生きた人間のための音楽なのだと実感を強くする。
癒しとか安らぎとか、そういったものを求めて対峙すると、反対に気圧されてしまうかも知れない。
もはやこれは、たたかいの音楽なのである。

トスカニーニ盤が忘れられない、でも、どうしてもあの音質は…という方には、このミュンシュ/BSO盤こそ次なる福音だろう。RCAによる良質なステレオ録音で遺されていたことは実に喜ばしい。

併録の作品では同じくバーバーの「メデアの瞑想と復讐の踊り」が、際立って素晴らしい。往時のボストン響の表現力が抜群に活きている。
以上バーバーの2作品はRCAからデジパック仕様の2枚組で発売されたアンソロジーで聴くことが出来る。当座の入手方法としては、これを探すのが最も手っ取り早いようだ。

他の2作品については、私は別の演奏で聴こうと思う。
完成度の高さ、殊に精度を云々すれば一つの極致と言えるのだが、その有り余る力に振り回されてしまった。

演奏の腰が据わっていなければ「物足りない」と言い、出来が良すぎると「疲れる、しんどい」と言う。
演奏家の切磋琢磨をよそに、贅沢な話じゃ!
  
  
  

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