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Sunday, April 13, 2008

モラヴェッツ/ショパン/ノクターン


(19曲/※20番と21番は収録なし)
イヴァン・モラヴェッツ(ピアノ/1966年録音)
(Elektra Nonsuch 9 79233-2)

ノクターンの全曲盤は、なかなか意に適うものが無くて難儀する。私にとって、求不得苦の迷い道の一筋を成している音楽だ。十数種を聴いた末に、やっと残った数種の中に、このモラヴェッツのものがある。

このCDを聴き、モラヴェッツに対して長らく関心を向けずにいたことを私は悔やんだ。

モラヴェッツは、不思議な風合いを持つピアニストだ。
薫陶を受けたベネデッティ=ミケランジェリの影響だろうか、音色に対しては殊にこだわりを持っているようである。彼が録音した多数の音源がある中、そんな美意識が異様なまでに色濃いのが、このノクターン集だ。

人の好みは色々あるだろう。
このCDをあらゆる人に薦めたいかと問われると、そうでもない。
─いっそのこと、パッハマンやザウアー、ローゼンタールをステレオマイクの前に呼び還したい。
ショパンのノクターンという作品に対して、そこまで思い詰めた人を慰めるのが、モラヴェッツの演奏なのではないだろうか?
つるつるに磨かれた翡翠玉のような風合いの音色。
それを暗闇の中で、ランプにかざしてじっと眺め入るような心象に誘うのが、この演奏だ。
鈍く柔らかい透過光の中に、先に挙げたような古き日のピアニストたちの俤が、消えては浮かび、浮かんでは消え去る。
こういう演奏は、もはや求めても得られるものではなくなってしまった。
「遺作」と附されたあと2曲が弾かれていないのが、残念でならない。これが21曲版の全集録音であったならば、私はショパンのノクターンに対して心を決めても良かったのだ。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
最後に本ブログ再開の言として、そして先々の為にも一言添えおきたい。
私は楽器一切に心得がない人間だ。「ひらひらと蝶が舞うような」の類の繰り言を連ねる術より他に持たない。
演奏表現全般、感覚に適えばそれで事足りるのであって、高次の精度を絶対条件とするものではない。
拙見を笑止と見倣す向きは、全てを黙殺して頂くように望む。
 

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Comments

blog再開おめでとうございます!
こうして、またこの場でTandoさんの記事を拝見できて嬉しいです。(^o^)/

モラヴェッツのノクターン集は、Tandoさんがあちらの方で紹介されているのを見て(そして安価に釣られ・・・)、購入し聴きましたが、スタジオ録音のある種の静寂がまたモラヴェッツの演奏をより美しくしているように感じました。
演奏自体もさることながら、音色がまろやかで耳ざわりが良いので何気によく聴いてます。
聴いていて、あまり深刻にならない所も好きですね~。

Posted by: ウィルソン | Monday, April 14, 2008 at 12:51 AM

ウィルソンさま

ありがとうございます。
好みは人それぞれかと思いますが、仰る通り「まろやか」なモラヴェッツの音色が私には殊の外、好みに合うようです。
このノクターンではまって、スプラフォンの音源も買いました。
モーツァルトなんかは、なかなか良かったです。

このピアニストはとことん、音色の人ですね。

Posted by: Tando | Wednesday, April 16, 2008 at 03:57 AM

こんばんは。
実は僕も夜想曲集はショパンのなかでも、一番こだわりを持っている作品群です。
ですので、SP録音に関しては「Nocturne」と記してあれば大抵購入しています(笑)ので、夜想曲を集めたアンソロジーは、ずっと温めているんです!

の割には、ステレオ録音はほとんど持っていません。
僕にとっての決定盤はルビンシュタインなのですが、最近、Levを聴いてみました。演奏はよいのかも知れませんが、残念ながら残響音がつよくて僕には合いませんでした。僕はどうしてもアンビエンスの強い録音は、それだけで避けてしまう傾向にあります…

モラヴェッツはいかがですか?ちょっと興味があります!!ご教示下さると幸いです。

Posted by: 夏目 | Friday, May 30, 2008 at 12:24 AM

>夏目様

19曲のものであれば、ルービンシュタインは正に福音ですね!
ノクターン、21曲で編まれた全集となると、なかなか条件に恵まれないのが悩ましいところで…。

リヴィア・レフの全集は私も聴きました。とてもいい演奏ですね。でも、確かに仰る通りアンビエンスが強い録音です。これはhyperionの録音全般に共通している傾向だと思います。

モラヴェッツ盤はその点では、大丈夫なんじゃないでしょうか。ハンマーが弦に触れる柔らかい質感が、巧く捉えられていると感じます。

Posted by: Tando | Saturday, May 31, 2008 at 10:23 PM

こんばんは。

なるほど、モラヴェッツ、機会がありましたらぜひ聞いてみたいと思います。ありがとうございました。

Posted by: 夏目 | Sunday, June 08, 2008 at 09:15 PM

月末発売の「ショパン・コンクール」、
予約させて頂きました。
エトキンもさることながら、盲目のウンガールによるショパンが楽しみでなりません。

手元に届く日を心待ちにしております。

Posted by: Tando | Thursday, July 17, 2008 at 10:31 PM

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