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Thursday, August 07, 2008

ショパン:ピアノ協奏曲(ピアノ六重奏版)

ショパン:
ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 op.11
〃   〃  第2番 ヘ短調 op.21
(ピアノ六重奏版)
ナウム・シュタルクマン(ピアノ)
グリンカ国立弦楽四重奏団
アレクセイ・シニョフ(db)
2004年録音
VISTA VERA VVCD-00158


先日届いたCD。
ショパンのコンチェルトをこうした編成で演奏することは、昔日よりしばしばあるようだ。
それでも、第1番,第2番揃ったCDはあまり多くないように思う。
一聴するやいなや、わが心の琴線に触れたので、ここでご紹介したい。

シュタルクマン(Naum Starkman/1927-2006)は、名教師コンスタンチン・イグムノフに師事した最後の世代に属するピアニスト。イグムノフは1948年に亡くなっているから、直弟子の訃報も近年相次いでいる。ボシュニアコーヴィチもシュタルクマンと同年、2006年に鬼籍の人となってしまった。同門で未だ健在の人となると、ガンバリヤンあたりしか思い浮かばない。

私にとって、ショパンの協奏曲はそう度々聴かれた楽曲ではない。
頻繁に難点を指摘される仰々しいオーケストレーションは、年端もいかぬ少女に粉黛を塗り重ねた姿を思わせる。
あまたの美質を連ねて成る楽曲であるはずなのに、どうしても居心地の悪さを感じてしまうのだ。

ピアノ六重奏版という編成で両曲を聴いたのは初めてだが、斯くあるべきという姿を初めて目の当たりにした心地がする。
一人一人の顔が見えるような弦楽アンサンブル、それがピアノソロと親密に融け合う姿が、聴者との隔たりをも大きく縮めるようだ。
そうだ、本当はこれくらいが、ちょうどいいのではないだろうか。
誰が望まずとも、楽曲が自ずとこの姿を望んでいるかのように感じた。

77歳のシュタルクマンのピアノは、力み処で幾分の脆さを感じさせはするが、大きな綻びもなく見事だ。一貫して繊細さを欠かさない、豊かな表現力の持ち主である。
弦楽アンサンブルも、この分野におけるロシアの伝統を汲んだ線の太い緊密さが、演奏全体をしっかりと固めている。

第5回ショパン国際ピアノコンクール5位入賞という経歴を持ちながら、あまり音源が聴かれることのなかったシュタルクマン。
この1枚は晩年に記録された貴重な遺産として尊びたい。
 

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Comments

Tandoさん、こんばんは。
シュタルクマンがこんな録音をしていたとは、初めて知りました。彼のレコードはUSSRの78rpm盤で、ショパンの小品を数曲聴いたことがあるのみですが、端正な中にも滋味溢れる良い演奏だったように記憶しております。

確かにショパンの協奏曲は、小編成で聴いた方がおもしろそうですね!

Posted by: 夏目 | Saturday, August 16, 2008 at 11:09 PM

>夏目様
いつもご来訪ありがとうございます(^^)
シュタルクマンはSP盤があるのですね!
USSRにありがちな、何かのコンクール受賞に対する当局からの「ご褒美レコード」の類でしょうか。お聴きになったことがある、というところが、さすが夏目様ですね!

本文で書き連ねたCDはとても滋味溢れる音楽が焼き付けられていて、日々愛着が増しています。私はもう、余程の演奏でなければフルオケ伴奏版は聴けないかもしれません(^^;
この作品のオーケストレーションは、どうにも管弦楽の編成の「多彩さ」を、ショパンが持て余してしまっているように感じてしまいます。
その点、室内楽の編成で聴くと各パートが実に緊密に結実していて、才気の閃きが俄然光輝を増すのです。
第1番の、あの早送りしたくなるような冗漫な前奏が、とても心地良く感ぜられました。

ハリウッド流儀の厚化粧女優が、突如ナチュラルメイクの
slavic top-model に路線変更したかのような驚きですね(笑)

Posted by: Tando | Sunday, August 17, 2008 at 06:56 AM

こんばんは!
Tandoさんのコメントを拝見し、ますます気になってきました。ん〜、このCD買ってしまいそうです!
シュタルクマンのSPは「ご褒美レコード」だったのかも知れませんね・・・。たしか12インチと10インチ盤に「別れの曲」とマズルカが数曲入っているのを、持っているはずです・・・。私の悲惨なレコード棚から探し出すことが出来た暁には、ぜひ復刻したいと思います(笑)

Posted by: 夏目 | Monday, August 18, 2008 at 11:06 PM

>夏目様

>このCD買ってしまいそう

わーい、嬉しいな~happy01
伴奏の方ばかり書いてしまいましたが、シュタルクマンのピアノも味わいがあって実に素敵です。

USSRのSP盤は選曲がイグムノフ系列の彼にピッタリという感じがします。
聴けたら本当に嬉しいですね♪

先般DIWで発売された「ショパン・コンクール」も愉しく嬉しく拝聴しました。
殊、期待一杯だったウンガールが最高でした!
私はユニンスキより彼ですね。
LP期の録音も聴きたいです~cd
 

Posted by: Tando | Tuesday, August 19, 2008 at 10:16 PM

「ショパン・コンクール」お聴き頂けて光栄です。
ウンガールは良いピアニストですね。
私も断然、ユニンスキよりもウンガールですね。

ユニンスキは当時流行りの即物主義的な演奏だったので、斬新に響いたのでしょう。現代の耳で聞くとウンガールの美しさの方が首位に相応し様な気がします。
LP録音の前奏曲集も機会があればぜひ復刻してみたいと思っています!!

Posted by: 夏目 | Saturday, September 06, 2008 at 10:02 PM

>夏目様

ウンガールこそ生粋のショパン弾きの
素質ですよね、やっぱり…!
その時代のスタイル、流行り廃りが評価にも現れるのは仕方ないですが、「コイントス」はあまりと言えばあまりです。

後年の録音は物の本で「繊細なショパンの極致」のように絶賛されていた記憶が今も新しく、是非聴く機会を得たいところです。
それにしても、これほど権威あるコンクールの、しかもほぼ1位に等しい入賞者が復刻をなおざりにされているとは…残念至極です!
 

Posted by: Tando | Sunday, September 07, 2008 at 10:20 PM

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