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September 2008

Tuesday, September 23, 2008

チャールズ・ローゼン

ピアニストのチャールズ・ローゼン(Charles Rosen/1927-)は、今や数少ないフランツ・リストの孫弟子。
偉大なるモーリッツ・ローゼンタールに師事しているから、ホルヘ・ボレットと同門だ。
ただ、ローゼンタールはあれこれ細かい指図をする人では無かったようなので、「薫陶を受けた」程度に受け止めておくのが穏当だろうか。
学識も深いローゼンはレパートリーの広いピアニストで、かつ表現手法は非常に穏健だ。たとえばチェルカスキーやアール・ワイルドのような、19世紀的ヴィルトゥオーゾの遺風を期待すると肩透かしかも知れない。
近年(2001年),イタリアFONEにSACDでモーツァルトのソナタ集を入れていたが(廃盤?)、これは無味乾燥に近い仕上がりでパッとしなかった。

彼の素晴らしさを実感出来るのは、CBS-SONYのESSENTIAL CLASSICSからCDとなっている、ベートーヴェンやバッハだろう。
ベートーヴェンの後期ソナタも非常に生真面目ながら期待以上の仕上がりだし、バッハのフーガの技法(テューレックの小品と2枚1組)も穏健ながら味わい深く、食傷させられることがない。
そして、「ゴルトベルク変奏曲」が佳演である。
グールドあたりで聴き慣れていると、この演奏の価値は相対的に上がってくる性質のものだ。
前者が一級のブランド品だとすれば、ローゼン盤は普段聴きに凄く向いている。
優しく滑らかなタッチと、潑溂としたメリハリ、聴き手を厭きさせないように仕掛けつつ、一切が押しつけがましくないのだ。何度聴いても新鮮だし、かといって辟易させられるような部分もないのだ。
「いつでも聴ける」こういう1枚を手元に置いておくのは、決して無駄ではないと思う。
その「滋味」が「地味」にも通ずる趣が故に、私がこの盤の真価を覚るには、少し時間がかかったが…。
なんとはなしにAmazonでも☆5つのレビューが2つ付いているのが、この盤の雰囲気を表しているのかもしれない。

つくづく思うことだが、バッハは色々聴いておいて無駄はない。「絶対」がない作曲家だ。
そこに尽きせぬ安堵を感じさせてくれる。

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Friday, September 12, 2008

亡命者達の調べ

日本語では(世界的にも?)、まず最高のコンテンツを誇るショスタコーヴィチサイト、工藤庸介様の"Dmitri Dmitriyevich Shostakovich"の中で、☆5つの評価を附され絶賛されている、同一団体演奏の音源が2点ある。
ショスタコーヴィチ作曲、弦楽八重奏のための前奏曲とスケルツォop.11と、弦楽四重奏曲第8番op.110の室内合奏版である。編曲と指揮はいずれもラザール・ゴスマン(or ラーザリ・ゴズマン/Lazar Gosman/Gozman/1926-?)、演奏団体は"The Soviet Emigre Orchestra"(ソヴィエト亡命者管弦楽団)によるもの。

両者は上述ショスタコーヴィチ作品2曲に加えて、チャイコフスキーの弦楽セレナードを加えてCD1枚、亡き英Olympiaから発売していた。
私はこのヴァージョンは未入手だが、同一音源は何故か日本プレスの"MUSIC MASTERS"レーベルからも発売されており、こちらで聴くことが叶った。中古市場での入手も、後者の方がまだ容易なようである。
それにしてもどうだろうか…、この切々と歌い上げるような響きは。
ソヴィエト時代のゴスマンの指揮はバロック~古典派の作品で聴き親しんでいたが、これほど心に染み入る響きは決して得られなかったように感じる。むしろ同世代同一圏内同分野の人々、バルシャイ、ソンデツキス、マルキスあたりと勝手に一括り「四天王」のように見なしていたのであるが…。

そして更にもう一枚、ゴスマン渡米後の音源がCBSから出ている。
"Tchaikovsky Chamber Orchester/Lazar Gosman"と題されたCDだ。
私は米Amazonで、それこそスターバックスコーヒー1杯くらいの値段で中古品を手に入れることが出来た。
これが、また、想像を絶する美しい響きなのである。
本当に切々と心の襞に切りつけてくるような音楽が満ち溢れている。豊麗とか玲瓏とか、美辞麗句で済む綺麗事ではない。
ライナーには上述「亡命者管弦楽団」が改称して、"Tchaikovsky Chamber Orchester"となった旨が記されている。なるほど、どう聴いてもこれは同一団体でなければ有り得まい。
冒頭のラフマニノフ「ヴォカリーズ」からして、響きが異常だ。作曲家自身がフィラデルフィア管を指揮した古い秀演もあるが、ここに込められた想念はもっと露骨で切実である。ラフマニノフがモイセーヴィチに語ったという"return"(帰郷)の想いが、ここではそのまま音になっている。
あとは掻い摘んでのご紹介になるが、ボロディンの「イーゴリ公」からの編曲の美しさも群を抜いている。やはりこれは囚われの心、亡命者の心の歌だ。そしてバーバーの「アダージョ」も、透明で切々とした響きが他を圧する。
他方でショスタコーヴィチの「24の前奏曲」からの編曲(基本的に編曲ものは全てゴスマンの手になる)に聴かれる洒脱さも忘れ難いものだ。

ここでご関心の向きは、是非海外Amazon(特にUSA)で"B00000DSCT"をお調べ頂きたい。
今から手に入れても決して遅くはない、心の宝たりうる1枚である。

それにしてもこれらのエトランジェ達は、ゴスマン氏は、今は一体どう過ごしているのだろうか…?
 

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