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Friday, February 20, 2015

ジブリ映画「風立ちぬ」と竹製の茶漉し

 本日、日テレ系列で21:00~ジブリ映画「風立ちぬ」がTV初放映となります。
 
 この映画は公開時に身内皆々うち連れて劇場まで観に行きました。
 
 思い返せば、家族で最初に観に行ったジブリ映画は1989年の「魔女の宅急便」でした。その頃僕は小学生で、亡くなった親父もまだまだ元気で、今やシネコンだけになってしまった京都新京極には幾つもの映画館があり、新作がかかる都度に手描き看板が架け替えられていました。
 宮崎監督が「長編引退作」と公開前に宣言した作品とだけあって、僕自身にとっての時間の変遷と交錯させながら感慨深く劇場まで足を運んだ次第です。

 この作品を総合的にどう評価するかは難しいところです。
 
 僕は荒井由実の「ひこうき雲」が流れるトレーラーを観ながら、全く手前勝手に感動的な内容を妄想たくましくしていたものです。
 戦間期の飛行機技術の飛躍的な発展の道程に対する、宮崎監督のフリーク的なこだわりの描写から、氏の普段の言行にも明白な反戦主義とが撚り合わされて、ニッポンの飛行機乗り達と飛行機技師達に捧げられる挽歌となろうことを期待していました。
 そんな映画の結びに荒井由実の「ひこうき雲」……、だとすればこれはもう涕泣不可避です。

 洗いたてのタオルチーフを携えて劇場に足を運んだ僕が、実際に「風立ちぬ」を最後まで鑑賞してそれを使ったか如何については書くだけ野暮な話であります。
 しんみりとさせられるシーンは幾つもあったんですが、我が国の戦間・戦中という、未だ脈打ち続ける血管、痛覚を伴う神経とで繋がった時代を舞台としている割に、感情の高揚というものが不思議なくらいありませんでした。
 ただ、緻密に作り込まれた、既に消尽して久しい「木造の生活」の描写の緻密さと血の通ったリアリティには瞠目させられました。そういう舞台の中で、専業声優じゃない演者各位が当てた淡々とした台詞に感覚を委ねていると、小津安二郎の映画と重なるものがあります。
 かかる趣旨の作品を荒井由実の「ひこうき雲」で締めくくっても、期待ほどの効果は上がらないのは当然なのかもしれません。
 まあはっきり言ってこの映画で一番泣かされたのは劇場公開前のトレーラーでした。

 良い所も勿論沢山ありました。
 先にも触れかけましたが、「戦前~戦中の日本」をあれだけ活き活きと、かつ職人的に描けるアニメーション作家はもう幾らもいないでしょう。そして言わずもがな宮崎駿監督は実績も技量も筆頭格でありましょう。その手際を堪能出来たのは得難い収穫でした。
 
 そして話は今回の本旨に移るのですが、堀越二郎が駄菓子屋で「シベリア」(カステラ生地に漉餡or羊羹を挟んだもの)を買って帰った後、自室で紅茶を淹れながら同僚の本庄季郎技師に「シベリアか。妙なもんを食うなぁ」と言われるシーンがあります。
 ここで僕の目を釘付けにしたのが、堀越が使っている茶漉し。
 これが、竹製なんですよね。
 ああ、昔は、金網茶漉しが普及する前は、茶漉しも竹製だったんだなあと、煎茶飲みの僕は一入感動したものでした。こういうプロップの質の高さはジブリアニメの真骨頂ですよね。

 煎茶は金気を嫌うとはよく言われますから、竹の茶漉しで淹れたら味が良くなるのではないか、と思いは巡ります。ただ、これは今でも製造されているのだろうか?

 そう思いながらインターネットで検索したところ、いともたやすくアマゾンに在庫がありました。いささか拍子抜けです。


 (注:リンク先商品は中国製とのことです)

 ただ、案外値が張るのと、これに送料を含めると価格増々で買い倦んだまま歳月を経てしまいました。
 
 ところが、先般偶々、大阪難波の日本工芸館に古陶磁展を観に行った際、館内の「民芸普及部」(日本の手工芸品の購買部門)を覗くと、この茶漉しが売られているではありませんか!
 価格もアマゾンのほぼ半値です。喜んで買い求めました。購買担当の方曰く、これは大分別府の竹細工なのだが、作り手が高齢で体調が余り芳しくなく産量が限られていて、いつ来ても買えるというものではない、とのことです。
 別府の名産竹細工はもう20年以上前から安価な中国産・東南アジア産に席巻されつつあると聞き及んでいましたが、今でも日本人の作り手が仕事を続けているのであれば嬉しい限りです。

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 さて、使い心地です。比較的目が荒いので、茶葉は濾し取りますが澱の通りは多いように感じます。しかし、金属製の茶漉しよりも風味が豊かでまろやかだと感じました。もう何服飲んだとも知れない煎茶ですから、錯覚ではないと思います。
 難しいのは手入れでしょうね。一度使うとすっかり湿気ってしまいますから、この乾燥を怠ると臭気で悲惨なことになりそうです。伝統工芸品を使うことは、愛着と背中合わせで手間暇とも付き合うことです。

 とりとめもなく書き連ねましたが、本日「風立ちぬ」もし御覧の折には、是非「シベリア」と「竹製の茶漉し」のシーンにも目を留めて頂ければ、と思います。

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